第 8回 サラウツ国際ギターフェスティバル


12月26日から30日まで、スペイン北部バスク自治州の小さな街サラウツで行われた、
AIREAN(バスク自治州ギター協会)主催によるサラウツ国際ギターフェスティバルに参加しましたので
様子を報告させて頂きます。この街はバルセロナから国鉄で約8時間をかけ北上した、
フランスとの国境近いサン・セバスチャンという街から、さらにローカル線で20分ほどのところにあります。
非常に雨が多く、フェスティバル中もあいにくの天候でした。
また大西洋に面しており、夏になると避暑地として多くの旅行者を集めます。

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このフェスティバルは26日から29日までの4日間のマスタークラスと、
講師陣によるリサイタル、そして最終日にはコンクールが行われます。
ヘラルド・アリアガ、エドゥアルド・バランサーノ、マヌエル・ゴメス・オルティゴサ、
去年度のコンクールの優勝者アナ・エレナ・フェルナンデス、
またアレクサンダーテクニックのクラスにアネ・ランダ、その5名の講師に、
参加した20数名の生徒がレッスンを受けました。

僕は電車の時間の関係で26日の夜、現地に到着したのでレセプションなどには参加できませんでしたが、
翌27日午前、どうやら一番手で僕のレッスンの予定が入っていたようで、
というわけで早速でしたがエドゥアルド・バランサーノ氏にエキノクス(武満徹)を受講しました。
彼は音楽的にも技術的にも極めて正攻法で、音楽が求めているものを忠実に表現するようなスタイル。
そういった意味での譜読みも鋭く、徹底したダイナミクスのコントロールやテンポ設定、
聴き手にエキセントリックに感じさせるヴィブラートなど、参考になるアドバイスをたくさん頂くことができました。
また彼はA・カルレバーロ奏法を勉強した人らしく、それに基づいた左手の使い方や、
ポジション移動の際の左手のノイズの避け方の微妙な力加減なども貴重なアドバイスでした。
彼は教師として意欲に満ちており、大変温厚な人であることも書いておきたいと思います。

連夜に渡って行われた講師陣によるリサイタルもいくつか聴きました。
27日にはバロックギターを携えたヘラルド・アリアガによる、
R・de・ヴィゼー、G・サンス、S・de・ムルシアなど全曲バロック音楽によるプログラム。
こういったレパートリーを専門にしている人らしく、
自然なフレージングや装飾法でこの時代特有の香りを醸し出していました。
29日はエドゥアルド・バランサーノによるリサイタルで、プログラムは前半に
「F・ソルの知られざる作品群」というタイトルで数々のメヌエットやワルツや曲集からの抜粋など。
そして後半にはG・サントルソラ、F・タレガ、M・ファリャ、J・K・メルツ、A・バリオスという小品を中心にしたもので、
全曲に渡って集中力の高い、良くコントロールされた音楽を聴かせてくれました。
ソル作品では爪をあまり使用せず、オリジナルの響きに近い格調の高さと、
またタレガ、メルツ作品での音色、ルバート、ポルタメントなど、
こちらもオリジナルに近いと感じさせられる趣の深い音楽表現。
それぞれの作品の背景を良く理解しており、それが十分発揮された大変納得のいくものでした。

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E・バランサーノ氏のコンサートの様子

そして最終日の30日には受講生によるコンクールが行われ、
課題である自由選曲による30分のプログラムを10数名の参加者が演奏しました。
その結果、序奏とロンド(D・アグアド)、ソナタ(M・C・テデスコ)、ロンデーニャ(S・デ・ラ・マーサ)
などを演奏したルベン・アベル(スペイン)が1位に選ばれました。
エキノクス(武満徹)、悪魔の奇想曲(M・C・テデスコ)、祈りと踊り(J・ロドリーゴ)を
演奏した僕に事実上2位ということで審査員特別賞が与えられました。

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授賞式の様子

このフェスティバルは全体にオルガナイズが良く、参加者への配慮が行き届いています。
講師陣や参加者、運営者やサラウツ市役所の方などみなフレンドリーで、
滞在中泊まったホテル、毎昼無料で支給されるレストランでの食事は、
贅沢なバスク料理という感じでとてもおいしく、快適に過ごすことができました。

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滞在したホテル

その後友人のいるバスクの主要都市サン・セバスチャンに立ち寄り観光を兼ねて彼とツーリング。
カテドラルや中心街、海岸などへ行きましたが、カンタブリア海に面したこの街は、
地中海のあるバルセロナとはまた違った匂いで、スペインというよりもフランスに近いその美しい町並みなど、
また1つスペインの違う一面を見たような気がしました。
サラウツ市も合わせて僕にとっては初めてのバスクでしたが、大変有意義な経験になったと思っています。

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