ホプキンソン・スミス  マスタークラス~ルティエール芸術音楽学校


5月2日、ホプキンソン・スミスの マスタークラスがルティエール芸術音楽学校にて行われました。
ホプキ ンソンはアメリカを代表するリューティストで、数多くのCDが発売されていますが、
「ナルバエス作品集」、「ハプスブルグ」、「S・L・ヴァイス パルティータ集」など、
オーソドックスでありながら自然で歌心にあふれ、いい意味での古めかしさを感じさせる素晴らしいアルバムです。

レッスン室に現れたホプキンソンは、気さくでやさしそうなおじさんといった印象。
ポストグラードの生徒2名が受講しましたが、
まずは、ディエゴ(チリ)がフーガ~BWV1001(バッハ)を演奏。
線の太い音でしっかり演奏しているものの、アーティキュレーションにこだわってのことだろうか、
全体に音を短めに切り、それがせわしなさを感じさせる。
まず、それについてのアドバイスがされ、音を短く切るばかりでは音楽的にも閉鎖的になる、
もっと大きく開放的な表現をするように。
アーティキュレーションも大切だが、全体の音楽を表現することの方がもっと大切だ。
不用意なアクセントを付けないこと、リズムをゆったり取ること、そうでなければぎすぎすした音楽になるとのこと。
どんな表現を感じているのかを生徒に歌わせてみて、
その通りにギターで演奏してみるように言うのですが、それがなかなか難しい様子。
我々ギタリストやリューティストなど、撥弦楽器奏者はそのことを忘れてしまいがちだ。
ギターの上でも歌心を忘れてはならない、ということでした。
続いて、ヤン(ノルウェー)がファンタジアよりラルゴとアレグロ(テレマン)を演奏。
美しい音だが、スラーやトリルの音が雑だったり、ところどころリズムが不安定。
オリジナルの楽譜は持っていますか?との質問に、彼が持っていないと答えると、
編曲された楽譜だけでは本当の意味が分からない場合があるので、オリジナルを見るべきだとの指摘がありました。
バロック音楽はベースラインが重要だが、だからといってそれが唐突なアクセントになってはならない。
自然な音量で、全体を包み込むようにとのこと。
不用意に乱れた音を出さないこと、難しいフレーズを音楽的にも難しく聞かせないこと、
状況に相応しくない位置にスラーを付けないことなど、まず自分の音をよく聞くように。
自分の音を完全に聞くことができればおのずと解決していくはずだ、とその重要性を説いていました。

ホプキンソンの音楽はゆったりと落ち着いて深みを感じさせ、その人柄に共通しています。
演奏にみなぎっている独特の匂いは、古楽への深い理解を物語り、
レッスンでのジェスチャーは、音楽そのものを表現しています。
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