12月23日(土)
バルセロナ国際ギターコンクール主催者のE・ダバロス氏より祝辞を頂きました。


"El sentir la guitarra en forma distinta, escuchando sus sonidos desde la interioridad del hombre,
producir la emocion contenida, recibiendo la respuesta del auditorio a la expresion manifestada,
son algunos de las caracteristicas mas significativas que
Ryuji Kunimatsu nos hace llegar en cada obra que interpreta.
No tenemos duda que la guitarra gane un estupendo interprete
que dara grandes satisfacciones a los que tengan la oportunidad de escucharlo."
Mis felicitaciones mas sinceras
Eulogio Davalos
Barcelona 12 de Diciembre 2006

「これまでになかったギター演奏の感覚、心の中に溶け込んで来る熱い感情を伴った音色、
そして聴衆を魅了する特別な個性は、國松竜次が演奏することによって表現できるものだ。
ギターが素晴らしい演奏者を得たこと、また彼を聴く機会に恵まれれば、
大きな満足が得られることは疑いがない。」
心より祝福を
エウロヒオ・ダバロス
2006年12月12日バルセロナにて



12月22日(金)
サンタ・マリア・デル・マル教会にてヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロの前身のような楽器)奏者であり、
スペイン古楽界を代表するジョルディ・サバイのコンサートを聴きました。
彼はルネサンス、バロック音楽の分野で数々の素晴らしいCDがありますが、
中でもフランス・バロック期の作曲家マラン・マレの生涯を描いたフランス映画
「Tous les matins du monde」(めぐり逢う朝)の音楽を担当し、
その大成功によって世界的な名声を手に入れた人物でもあります。
このコンサートは、今年生誕500年になる、日本にキリスト教を伝えたことで有名な
フランシスコ・ザビエルを讃えたもので、プログラムはそれにちなみ、
彼が生まれたスペインの古い賛美歌と、布教活動を行ったインド(ゴア)や、
最後にたどり着いた地、日本の伝統音楽とが交互に組まれたものでした。
作者不詳の賛美歌でのジョルディ・サバイ率いる楽団の質の高さ、コーラス隊の完璧な調和と美しい声は、
500年という時間を越えて、その時代を今に再現しているかのようでした。
ジョルディのヴォオラ・ダ・ガンバの音色は深い哀愁に包まれた完全に落ち着き払ったもので、
また演奏以外のパートでは弓を振って楽団全体の指揮を執っていました。
そして東洋の伝統音楽の方では、インドの民族楽器サロード奏者を招いての作者不詳のインドの古い作品、
また日本の伝統音楽では、日本から優れた和楽器奏者が招かれ、
能管による「神楽囃子」と「乱曲」、尺八による「霊慕」、琵琶による「本能寺」などが演奏されました。
これらの日本の伝統楽器を生で聴くのは僕自身初めてで、
それをこのバルセロナという地で聴くのは数奇な体験ですが、
逆に「これが日本なんだ・・・」という感覚も強烈に感じたような気がします。
能管奏者の鯉沼廣行さんは、ソロ演奏しながらの客席後方からの入場、
そしてプログラム最後には退場という演出でしたが、
その演奏しながら歩く姿は、何やら五条大橋の牛若丸でも連想させるようなものがありました。
軽やかな装飾音と澄み切った音色がこの教会全体に響き渡っていて、
演奏終了後の鯉沼さんへの拍手はとりわけ大きかったような気がします。
それにしてもジョルディ・サバイという人物、これだけの優秀な楽団員を率いる指導力、
それにヨーロッパの古楽だけに飽き足らず、東洋の古楽にまで挑戦するというのは、
ただならぬ見識の深さと好奇心、行動力の持ち主だと感じさせられます。
このような非の打ち所のない完璧なコンサートを見るというのはとても貴重な体験です。


12月20日(水)
ルティエール芸術音楽学校で、ピアノ科の教師であるアントニオ・ルイス・メジャド氏の生徒による発表会が行われました。
アントニオは毎年この時期、クリスマスコンサートとしてこのような会を催しているようです。
若者から年配者まで12名がハイドン、モーツァルト、シューマンなどのクラシック作品や
ピアソラなどを演奏し長時間に及びましたが、それぞれがピアノへの思いを語るなどアットホームな雰囲気。
またアントニオもトークで合間を盛り上げるなどはじけたキャラが炸裂していました。
そして最終のトリとして、なんとギターを勉強しているはずの日本人留学生Yさんが、
ショパンの「別れの曲」とドビュッシーの「人形のセレナーデ」を繊細なテンポルバートで音楽的に演奏。
終了後彼女の音楽表現への賞賛の声があちこちから聞かれました。
彼女は幼い頃からピアノを学んでいたらしく、ギターを専門に学んでる今もピアノは体に馴染んでいるよう。
ギター、ピアノの他に同じくこの学校の教師であるフェランという先生に歌も習っていて忙しい留学生活を送っているもよう。
ギターのみならず、ピアノも歌も歌えるギタリスト、
なんていうのはほとんど前例がなく、面白い存在になるかも知れません。


12月15日(金)
ここのところCD製作のための準備に追われています。
これはバルセロナのコンクールの副賞としてのものなので、収録曲はまだ公開できませんが、
コンクールがミゲル・リョベートを讃えたものなので、それに関するレパートリーを考えています。
バルセロナでとある楽器店と音楽教室を主宰してらっしゃるA氏という方がいらっしゃるのですが、
彼はリョベートの自筆譜やその他遺品を多数所有されています。
彼はそれらのコレクション全てをバルセロナ音楽博物館に売却するように話を進めているらしいのですが、
その中から未出版の作品を僕のCDに収録したいと考え、何度もお願いに伺ったのです。
初めは頑なに「No」だったのですが、次第に熱意に押されてきたのか話を聞いてくださるようになり、
最終的には好意で2作品の自筆譜のコピーを頂くことができたのです。
(第三者に譲渡しないという誓約書にサインしなければなりませんでしたが。)
これらの2作品は残念ながら世界初録音というわけにはいきませんが、
CDのプログラムの華になるもので、A氏には大変感謝しております。
しかし考えてみれば、こうやって身近にリョベートの自筆譜や遺品を所蔵されている方がいらっしゃるという環境も、
これぞスペイン、という気がしてきます。


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