10月28日(土)
カタルーニャ上級音楽学校で学ぶ友人のメキシコ人ギタリスト、
ロドリーゴ・ネフタリのリサイタルが「Casa Luthier」で行われました。
 プログラムは、ドビュッシー讃歌(M・de・ファリャ)、ワルツ第4番(A・バリオス)、
ジャンゴ・ラインハルトの主題による変奏曲(L・ブローウェル)、ソナタ第3番(M・ポンセ)、
5つのバガテルより(W・ウォルトン)、天使の死(A・ピアソラ)というもので、 
それぞれの曲を美しい音で思い入れたっぷりに、
また多少不安なところがあっても気持ちで乗り切る集中力の高い演奏。
後半に行くにしたがいノリも良くなって行き、最後のピアソラ、またアンコールで弾いた南米の小品は
体の底から湧き出るような自然な音楽表現で、盛大な拍手が贈られていました。


10月23日(月)
長年に渡ってバルセロナを拠点にギター演奏、作曲活動を展開してきた、
アルゼンチンのM・A・チェルビート氏にレッスンを受けました。
 11月にバルセロナ国際ギターコンクールというものが開催されるのですが、
彼の新作である「Oh Guitarra」という作品が、このコンクールの1次予選の課題曲なのです。
 実は5日ほど前彼から電話があったのです。

 チェルビート氏(以下C) 「どうかね・・・、Oh Guitarraの練習は頑張っているかね・・・。」
 僕 「あ、はい、頑張ってます!」
C 「どうかね・・・、あの作品は好きかね?」
 僕 「あ、はい、好きです!」
C 「あの作品はとても難しい・・・。多くの指示や特殊奏法がふんだんに含まれている・・・。
どうかね・・・、君にアドバイスを与えることができるんだが・・・。」
 僕 「あ、それは、レッスンとしてですか・・・?」
C 「Exacto!!(その通り)」(←キッパリと)

  というわけでレッスンをお願いしたのでした。
 レッスンで感じた彼の音楽性というのは、とにかくアグレッシブの一言。
ギターをそれ以上強く弾いてももうそれ以上音は出ないよ、
というレベルでの右手(じゃなくて、彼はサウスポーなので左手)の弾弦の強さ。
 僕の演奏へのアドバイスも「もっと強く!もっと強く!」、これが約2時間繰り返されたのでした。
 初め、このレッスンがいいものだとは思えず、
何か無頓着な演奏法を強要されているようにしか感じられなかったのでした。
 しかし、時間が経つにつれ、何かが変わっている自分に気付く僕。
 何かスペインに来て3年の間に、いつしか忘れていた感覚というか何と言うか。
 僕はもともと情熱的な音楽をしたいといつも思っていたのでした。
それが、スペインに来てからというもの、音色の変化であったり、
丁寧なフレージングであったりといった音楽表現を追求するあまり、
いつしかアグレッシブさというものを忘れていたような気がします。
 だからといって、丁寧な音楽表現が悪いわけではない。
もともと僕の持っている音楽性の中に、PPやPPPがあるとすれば、
Fの方の上限をFFやFFF、もしくは我を忘れたFFFFに引き上げることができれば、
もっと幅の広いスケールの大きな音楽ができるではないか。
 そんなことに今更ながら気付かされたわけです。M・A・チェルビート氏には、
大変いいレッスンをして頂いたと今では心から感謝しているのです。


10月22日(日)
イタリアのギタリスト、ステファノ・グロンドーナのCD「Lo Cant dels Acuells」を聴きました。
2枚組みで、収録曲はタレガ、リョベートなどロマン派中心。
グロンドーナの演奏の特徴は、イタリア・オペラそのままの歌心に溢れた自然で純粋な表現。
音楽への深い信仰心に満ちた精神性に心打たれます。
そしてこのCD、何がすごいかというと、彼のコレクションである数本のアントニオ・デ・トーレスや、
サントス・エルナンデス、ドミンゴ・エステソ、その他の歴史的な名器ばかりを使用していること。
それぞれのレパートリーの背景に即して楽器が選ばれていて、その音の違いを聴き比べることが面白い。
最近、ギターマニアチックな心境になりつつある僕にとっては、大変興味をそそられます。
ちなみに、1年ほど前、バルセロナで行われたグロンドーナの公開レッスンに参加したのですが、
自分のレッスン、他の受講生の聴講を通して彼から学んだことは大きなものでした。
それは、音を飛ばす方向と距離、妥協を許さない徹底した歌心、
今弾いているメロディや和音をしっかり聴いて自分自身がそれをよく感じること。
この3つの点に尽きます。よく考えてみれば当たり前のことのように聞こえるかも知れませんが、
当たり前のことを当たり前のように行うのはとても難しいことだと思います。
このときアントニオ・デ・トーレスを持っていた彼が演奏したM・ポンセのソナタ第3番は忘れることができません。
「Lo Cant dels Acuells」は、そんな体験を思い出させてくれるようなアルバムです。


10月19日(木)
パソコンの調子が悪くなりました。と言っても、もうほとんど動かない、起動も出来ないようなお手上げ状態。
(なので最近ブログ&HPの更新が滞ってしまいました、と言いつつ言い訳?)
近所の電気屋に持っていったところ、日本製なのでスペインでは修理出来ないと言われ、
日本に修理に出すことを勧められました。でも、帰国までもうわずかなのに、
修理のために送るのはもったいない感じがしたので、
「このまま諦めるか・・・」と思っていたところ、同居人が「PCシティに持って いってみたら?」と。
どうやらPCシティはパソコン専門店で、どの会社のパソコンであれ、調子が悪いところは見てくれるとか。
さっそく行ってみると、俳優のオーランド・ブルームそっくりな修理担当のお兄さんがパソコンを見てくれ、
テキパキと見たこともないような画面を次々と開いて原因を調べ、
「あぁ、これはハードディスクがおかしくなってるよ」と言って、取り替えてくれました。
その、まるで漢方医が患者の顔を見ただけでどこが悪いのかを分かってしまう様子(←大げさ)や、
パソコンのような複雑(と思われる)機械をいとも簡単に直してしまうお兄さんを見ていて、
なかなかカッコええやん・・・」と、思っちゃいました。
たまに聞くことですが、男性が電気製品の配線などをテキパキと直したりするところに女性がくらっと来る、
みたいな話が理解できたような気がしました。

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