10月29日(金)
以前、あるギタリストのマスタークラスを受講した際、
その場では僕自身それほど有益なものではなかったと感じていたのですが、
しばらく時間が経って振り返ってみると、
それを機に2つのことに気付くことができたと自覚するようになったのです。
1つは、左手はしっかり押さえなければならないということ。(笑)
「当たり前じゃないか!」というツッコミが返ってきそうですが、
うまく説明できない、僕なりに感じたことがあったのでした。
そしてもう1つは、右腕のどの部分をギターに当てるかということ。
その知識は今現在の演奏スタイルに大きく影響しています。
時間が経ってみなければ分からないことというのは多々あるものです。


10月22日(金)
この日はアレキサンダーテクニックの初めてのレッスンを受けました。
アレキサンダーテクニックとは、長年のうちに身に付いてしまった不自然な癖や緊張、
間違った体の使い方を修正し、より効率的で適切なものにするための訓練です。
僕がこれを学ぼうと思った理由は、ギター演奏中の体の緊張や呼吸法などに疑問を感じ、
それらをより良くすることによって技術、音楽性共にさらに伸びる可能性があるのではないかと思ったからです。
また演奏以外の時にも感じることのある体の緊張や痛み、
不自然な動きなども解消できるのではないかと考えました。
先生であるアリックスは数々のギタリスト達のレッスンを行ってきており経験豊富で、
レッスン室には体の構造に関する図や写真がたくさん貼られ、
それらを参照しながらどういう動きが構造に適しているか適していないか、
などの説明がなされながらそれらを実践してみるという形で行われました。
椅子に座っている時の腰の位置、背骨の角度や湾曲の具合、足の位置、首の角度、
同じく立っている時や寝ている時のそれらの位置、体を曲げるときはどこを支点にするか、
そして椅子からの立ち上がり方、ベッドからの起き上がり方、歩き方など、
こと細かに指摘していただきましたが、「言われてみればそうだな」と思わせられることばかり。
無意識のうちに、ごく当たり前の良い動きが全くできていないことを思い知らされ驚きです。
たった1回レッスンを受けただけではあるけれども、それらに気を配るだけで何か楽になったような感覚があります。
始めの頃は頻繁に通うことになると思いますが、この先どんな知識を得ることができるのかとても楽しみです。


10月18日(月)
今年度はギターの他に、アレキサンダーテクニックと作曲のレッスンも受けようと思っています。
ギターも今まで習っていたリカルドではなくフェルナンド・ロドリゲスという先生に就くことを決めました。
どの先生に習うかということについてしばらく悩みましたが、
レッスンを見学したり、知り合いから情報を得るなどした結果決めたことで、
自分にとっては違うタイプの音楽性を勉強する必要があると感じたからです。
今日はフェルナンドの初めてのレッスンを受講しましたが、
僕にとっては全く新しい発想をアドバイスして頂くことができました。
人伝に聞いた話では、彼の演奏はとても細かな音色の変化や
ヴィブラートなどの表現をよくするそうですが、実際レッスンでの指摘は、
音の放つ方向性の使い分けや、細かいニュアンスを表現するための右手の微妙な使い分け、
またいくつかのフレーズを層と捉えてそれにそった抑揚を持たせるといった発想は、
立体的な音楽作りのためのとても貴重なアイデアでした。
ヴィブラートや音色の使い分けなどのアドバイスも繊細で、内省的かつ感受性豊かな音楽性の持ち主です。
その後数人の生徒のレッスンも見学しましたが、今までとは全く違ったスタイルの先生でありとても興味深く、
これからじっくりフェルナンドの音楽を学んで行きたいと思います。


10月16日(土)
先日、若い世代を代表するフラメンコギタリスト、ビセンテ・アミーゴのコンサートを聴く機会がありました。
編成は彼を中心に、セカンドギター、カンテ(歌)、パーカッション、ベースなどで、
それらが様々に組み合わされ音楽が展開していきました。
演奏内容は当然のこと、メロディラインやハーモニーなどは、
都会風で洗練されていながらも、フラメンコの伝統を感じさせる大変センスのいいもので、
そして何より舞台上でのビセンテの立ち居振る舞いやキメのポーズなどもカッコ良く、
さわやかに聴衆の心に入り込み、さわやかに心を打つといった印象。

日本で2回、そして今回と、彼のコンサートに足を運ぶのは3度目でしたが
毎回胸を熱くさせられます。
ビセンテは数年前に国民栄誉賞を受賞するなど売れに売れ、
1ステージのギャラは、今やパコ・デ・ルシアを上回るとい う話です。
あまりに何もかもがキマりすぎていて、
ここまでカッコ良くていいのだろうか・・・?などということを思わせる存在です。


10月8日(金)
この日もリカルドのレッスンがあり、見学に行きました。
当然のことかも知れませんが、今年度は去年と比べて顔ぶれが変わったようです。
学校が変わったり、奨学金が下りなかったりという
それぞれの理由でいなくなった生徒もいれば、新しい生徒も加わりました。
この日の生徒はそれほどレベルの高いものではなかったので、
細かい技術のアドバイスに終始しましたが、それでも生徒にとっては為になった様子。
レッスンの後、みんなでカフェに繰り出しましたが、
話題はなぜか次第にリカルドを中心にエゲツない下ネタへと移行しました。
こういった話題をおもしろいと感じるのはどこの国も同じでまさに万国共通。
一時その場が「下ネタ喫茶」と化したことは言うまでもありません。


10月7日(木)
先月からルティエール芸術音楽学校の今年度の授業が始まり、
今日はリカルド・ガジェンのレッスンを見学に行きました。
リカルドに会うのは約3ヶ月ぶりでしたが、いつもの彼らしく元気で朗らかな様子。
彼はこの夏、コンサートやマスタークラスのためヨーロッパ各国を回っていたようです。
数人の生徒が古典、近現代の作品などを演奏しましたが、
やはり改めて彼の音楽家としてのレベルの高さに驚きを覚えます。
音楽の構造に適したテクニックや表現の細かなアドバイスが極めて正確で豊かなのです。
しかししばらくして感じさせられることは、生徒に対して示しているようなことは、
恐らく彼自身の演奏の際には考えていないだろうということ。
そういったものは考えずとも、自然に湯水のごとく溢れ出してくるのだろうと思われ、
例え初見であったとしても、高いレベルでそれらをやってのけてしまうのですが、
もともと持っている土台が極めて頑強で深いものであることを物語っています。
そしてとりわけ面白かったのは、いくつかの「マジック」を提示したことで、
またそのための練習法なども含め、とても貴重なアイデアを知ることができました。
「そう」聴かせるためには、まともに「そう」弾くばかりが能ではないということを改めて考えさせられました。

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